延命治療の拒否を書面に残したいと思っても、どのような言葉で書けば医療現場や家族に伝わるのか、そもそも自分で作った書面に意味があるのか、不安を感じる人は少なくありません。
特に、人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろう、点滴、抗生剤、輸血、緩和ケアなどは一つひとつ性質が違うため、単に「延命治療はいりません」と書くだけでは、本人が何を望み何を望まないのかが読み取れない場合があります。
日本では、人生の最終段階における医療やケアについて、医療従事者から説明を受けたうえで本人と家族等、医療・ケアチームが十分に話し合い、本人の意思決定を基本に方針を決める考え方が厚生労働省のガイドラインでも示されています。
そのため、延命治療拒否の書き方で大切なのは、法的な効力だけを期待して一枚の書類を作ることではなく、自分の価値観、拒否したい医療行為、希望するケア、代理で伝えてほしい人、家族へのメッセージを整理し、主治医や家族と共有できる形にすることです。
ここでは、延命治療を拒否する意思表示の基本、書面に入れるべき項目、文例、保管方法、家族との話し合い方、書いてはいけない曖昧表現まで、実際に使いやすい形で整理します。
延命治療拒否の書き方は意思を具体的に残すこと

延命治療拒否の書き方で最初に押さえたい結論は、抽象的な拒否ではなく、本人がどの状態でどの医療行為を望まないのかを具体的に書くことです。
「延命治療をしないでほしい」という一文だけでも意思の方向性は伝わりますが、医療現場では病状、回復可能性、苦痛の程度、家族の意向、本人の過去の発言を踏まえて判断するため、文面が曖昧だと家族が重い判断を背負うことがあります。
書面は医師に命令するための書類ではなく、本人の意思を確認する重要な材料として使われるものなので、医療者が読んだときに本人の価値観が想像できる内容にする必要があります。
本人の意思を明確にする
延命治療を拒否する書面では、まず本人が自分の意思で作成したことを明確にする必要があります。
家族に頼まれて書いたのか、病状に追い込まれて一時的に書いたのか、十分に考えたうえで書いたのかが不明だと、いざという場面で家族や医療者が判断に迷う可能性があります。
そのため、「私は、将来、自分で意思表示ができなくなった場合に備え、以下の希望を自分の意思で表明します」のように、本人の自由な意思であることを冒頭に置くと伝わりやすくなります。
さらに、作成日、氏名、生年月日、住所を記載し、可能であれば自筆署名を入れることで、誰の意思表示なのかを明確にできます。
書面の目的は死を急ぐことではなく、自分らしく最期を迎えるための希望を伝えることなので、本人の価値観や大切にしたい生活の形もあわせて書くと説得力が増します。
対象となる状態を限定する
延命治療を拒否する場合は、どのような状態になったときの希望なのかを限定して書くことが重要です。
例えば、治療すれば回復する肺炎や脱水まで一律に拒否したいのか、回復の見込みが乏しい終末期に限って延命措置を望まないのかでは、医療上の意味が大きく異なります。
一般的には、「現在の医学で回復の見込みが乏しく、死期が近いと複数の医師が判断した場合」や「重い脳障害などにより自分で意思を伝えられず、回復の見込みがない場合」のように条件を具体化します。
この条件を書かないまま拒否だけを書くと、必要な治療まで受けない意思と誤解されることがあるため注意が必要です。
本人が望むのは無益な延命を避けることなのか、痛みを抑えながら自然な経過を受け入れることなのかを分けて示すと、家族も医療者も判断しやすくなります。
拒否したい医療行為を分ける
延命治療という言葉は広いため、書面では拒否したい医療行為をできるだけ分けて書くことが大切です。
人工呼吸器や心肺蘇生のように生命維持に直結する処置もあれば、点滴や栄養補給のように症状緩和や一時的な回復に役立つ処置もあり、すべてを同じ扱いにすると本人の意思が伝わりにくくなります。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 心肺蘇生 | 心停止時の蘇生処置は望まない |
| 人工呼吸器 | 回復見込みがない場合は装着を望まない |
| 胃ろう | 長期的な人工栄養を目的とする造設は望まない |
| 点滴 | 苦痛緩和や一時的改善に必要な範囲は相談したい |
| 緩和ケア | 痛みや息苦しさを和らげる処置は希望する |
表のように分けて書くと、単なる拒否ではなく、どの医療は避けたいのか、どの医療は受けたいのかが明確になります。
特に緩和ケアまで拒否していると誤解されないように、「延命を目的としない苦痛緩和は希望します」と書き添えることが実務上とても大切です。
希望するケアも書く
延命治療拒否の書面では、拒否する内容だけでなく、希望するケアも必ず書くべきです。
なぜなら、拒否だけが強く書かれていると、医療者や家族が「何もしないでほしい」という意味に受け取ってしまい、本人が望んでいた穏やかなケアが伝わらない可能性があるからです。
例えば、「痛み、息苦しさ、不安を和らげる治療は最大限希望します」や「口から食べられる間は食事の楽しみを大切にしたいです」と書くことで、本人が大切にしたい時間の過ごし方が伝わります。
- 痛みを抑える薬の使用
- 息苦しさを和らげる処置
- 不安やせん妄への対応
- 口腔ケアや清潔保持
- 家族と過ごす時間の確保
- 自宅や施設など希望する場所
延命治療を拒否する意思は、医療を拒絶する意思ではなく、自分にとって意味の薄い処置を避け、苦痛を減らしながら自然な経過を望む意思として表現すると誤解が少なくなります。
代理で伝える人を決める
本人が意思表示できなくなったときに、書面の内容を医師へ伝える人を決めておくと実際に役立ちます。
日本では医療代理人の権限が一律に明文化されているわけではありませんが、医療現場では本人の意思をよく知る家族や近しい人の説明が、方針決定の重要な材料になります。
そのため、「私の意思を医療者に伝えてほしい人」として氏名、続柄、連絡先を書き、できれば本人とその人が事前に話し合った事実も残しておくと安心です。
ただし、代理で伝える人にすべてを任せるという書き方では、その人の負担が大きくなりすぎます。
書面には、「この人に判断を丸投げするのではなく、私の希望を伝える役割を担ってもらいたい」という趣旨で記載すると、家族間の対立や責任の押し付けを避けやすくなります。
家族への説明を入れる
延命治療を拒否する書面には、家族への短いメッセージを入れると、いざという場面で家族の迷いや罪悪感を軽くできます。
家族は「本当にこれでよかったのか」「治療をやめたと思われないか」と悩みやすいため、本人が落ち着いて考えたうえで希望したことが伝わる文章には大きな意味があります。
例えば、「この希望は家族に負担をかけるためではなく、私が自分らしく過ごすために考えたものです」と書くと、本人の意思として受け止めやすくなります。
また、「家族がこの書面に沿って医療者と相談してくれた場合、その判断を責める人がいないことを望みます」という一文も、家族を守る表現になります。
延命治療の拒否は冷たい選択ではなく、本人と家族が穏やかに向き合うための意思表示なので、感謝や希望を言葉にして残すことも大切です。
日付と更新履歴を残す
延命治療拒否の書面は、一度書いたら終わりではなく、考えが変わったときに更新できるものとして扱う必要があります。
人は年齢、病気、家族関係、介護経験、医療への理解によって考え方が変わるため、古い書面だけが残っていると現在の意思なのか判断しにくくなります。
書面の最後には作成日を入れ、見直した場合は「令和○年○月○日に内容を確認し、現在もこの意思に変わりありません」と追記するとよいです。
複数の書面が存在すると混乱するため、更新したときは古いものに「無効」や「更新済み」と書くか、家族や主治医へ最新の書面を渡し直すことが必要です。
特に入院、施設入所、がんや心不全などの診断、配偶者の死亡、代理で伝える人の変更があったときは、内容を見直す良いタイミングです。
延命治療拒否の文例はそのまま使わず調整する

延命治療拒否の文例は便利ですが、丸写しするだけでは本人の価値観が伝わりにくくなります。
文例はあくまで土台として使い、自分が何を大切にしたいのか、どの治療を望まないのか、苦痛緩和はどうしてほしいのか、誰に意思を伝えてほしいのかを加えることで実用的な書面になります。
ここでは、基本文例、家族向けの言葉、医療者に伝わりやすい調整の仕方を整理します。
基本文例を作る
最初に使いやすい基本文例は、本人の意思、対象となる状態、拒否したい延命措置、希望する緩和ケア、家族への配慮を一つの流れで示す形です。
例えば、「私は、将来自分で意思表示ができなくなり、現在の医学で回復の見込みがなく死期が近いと判断された場合、心肺蘇生、人工呼吸器の装着、回復を目的としない長期の人工栄養など、単に生命を引き延ばすだけの処置を望みません」と書くと、対象と内容が比較的明確になります。
続けて、「ただし、痛み、息苦しさ、不安を和らげる治療や、清潔を保ち穏やかに過ごすためのケアは希望します」と入れることで、医療全体を拒否しているわけではないことが伝わります。
- 本人の自由意思であること
- 意思表示できない場合の希望であること
- 回復見込みが乏しい状態に限ること
- 拒否したい処置を具体化すること
- 緩和ケアは希望すること
- 家族を責めないでほしいこと
この文例を使う場合も、自分の病気や年齢、家族構成、宗教観、住みたい場所に合わせて言葉を調整し、主治医に読んでもらって医学的に誤解がないか確認すると安心です。
状況別に言葉を選ぶ
延命治療拒否の書面では、すべての人に同じ表現が合うわけではありません。
持病がない人は将来の一般的な希望として書くことが多く、がん、心不全、慢性呼吸器疾患、認知症などの診断がある人は、その病気で起こりやすい場面を想定して書いたほうが実用的です。
| 状況 | 書き方の方向性 |
|---|---|
| 元気なうち | 価値観と基本方針を中心に書く |
| 持病がある | 主治医と想定される治療を確認する |
| 入院前後 | 病院の書式と自分の希望を合わせる |
| 施設入所時 | 救急搬送や急変時の希望も伝える |
| 一人暮らし | 連絡先と保管場所を明確にする |
同じ「延命治療を望まない」という意思でも、急性期病院での蘇生処置、施設での救急搬送、在宅療養中の看取りでは必要な情報が違います。
文例を自分の状況に合わせることは、書面の信頼性を高めるだけでなく、実際に関わる人が迷わないようにするための配慮でもあります。
避けたい曖昧表現を知る
延命治療拒否の書面では、気持ちは伝わるものの判断材料としては曖昧になりやすい表現があります。
例えば、「苦しいことはしないでください」「自然にしてください」「迷惑をかけたくありません」という言葉は本人の思いとして大切ですが、医療行為を選ぶ基準としては解釈が分かれます。
「苦しいこと」が治療の副作用なのか、人工呼吸器なのか、点滴なのか、入院そのものなのかが分からないと、家族は本人の意図を推測しなければなりません。
曖昧な表現を使う場合は、その後に「ここでいう延命治療とは、回復の見込みがない状態で生命を引き延ばすことを主な目的とする処置を指します」のように補足すると実用性が上がります。
本人らしい言葉を残すことは大切ですが、医療者が読んで判断できる言葉に翻訳する意識を持つことが、書き方の大きなポイントです。
延命治療拒否の書面で入れる項目

延命治療拒否の書面は、思いを自由に書くだけでなく、必要な項目を漏れなく整理すると使いやすくなります。
特に、本人情報、作成日、意思表示の条件、拒否する処置、希望するケア、連絡先、家族へのメッセージ、保管場所は、後から確認されやすい部分です。
ここでは、書面に入れる項目を実務的に整理し、抜け漏れが起きやすいポイントを説明します。
本人情報を整える
本人情報は、書面が誰の意思表示なのかを確実に示すための基本項目です。
氏名だけでは同姓同名の可能性があるため、生年月日、住所、電話番号、緊急連絡先を併記すると確認しやすくなります。
また、本人の署名はできるだけ自筆にし、手が不自由な場合は代筆者の氏名と代筆理由を残すと、後で作成経緯を説明しやすくなります。
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
- 作成日
- 自筆署名
- 緊急連絡先
- かかりつけ医
本人情報は単なる形式ではなく、急変時や入院時に書面を見つけた人が本人確認をするための入口になります。
書き終えた後は、家族、代理で伝える人、かかりつけ医が同じ最新版を把握しているか確認することも重要です。
医療行為を整理する
書面に入れる医療行為は、拒否するものと希望するものを分けて整理すると読みやすくなります。
医療行為の名称は難しいため、正確な表現にこだわりすぎるよりも、主治医や看護師に確認しながら、自分の状態で実際に起こり得る選択肢を言葉にするほうが実用的です。
| 分類 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 蘇生処置 | 心臓マッサージや電気ショックを望むか |
| 呼吸管理 | 人工呼吸器や気管切開を望むか |
| 栄養補給 | 胃ろうや中心静脈栄養を望むか |
| 水分補給 | 点滴をどの範囲で希望するか |
| 感染治療 | 抗生剤をどの目的で使うか |
| 緩和ケア | 痛みや苦しさを和らげる処置を希望するか |
医療行為を表にすると、家族が主治医に質問しやすくなり、本人の希望を話し合いに乗せやすくなります。
ただし、すべてを事前に決め切ることはできないため、「最終的には私の価値観を踏まえ、医療・ケアチームと家族で相談してください」と添えると現実に合いやすくなります。
価値観を文章にする
延命治療拒否の書面で意外に重要なのが、医療行為の希望だけでなく、本人の価値観を文章にすることです。
医師や家族が判断に迷う場面では、本人がどのような生活を大切にしていたのか、何を避けたいと考えていたのかが方針を考える手がかりになります。
例えば、「会話ができることを大切にしたい」「強い苦痛を伴う治療より穏やかに過ごす時間を優先したい」「家族に過度な負担をかける治療は望まない」などの表現が考えられます。
価値観は一見あいまいに見えますが、個別の医療行為だけでは判断できない場面で、本人らしさを補う役割を持ちます。
特に認知症や重い意識障害など、長期的に意思表示が難しくなる可能性を考える場合は、治療の有無だけでなく、どのような状態を自分らしいと考えるかを残しておくと役立ちます。
延命治療拒否を書くときの注意点

延命治療拒否の書面は、作れば必ずそのまま実行される万能の書類ではありません。
医療現場では、本人の意思、医学的妥当性、家族の理解、緊急性、病院や施設の方針などを踏まえて判断されるため、書面だけでなく話し合いと共有が欠かせません。
ここでは、誤解されやすい法的効力、医療者への伝え方、家族間トラブルを防ぐ工夫を説明します。
法的効力を過信しない
延命治療を拒否する書面は、本人の意思を示す重要な資料ですが、日本であらゆる医療判断を機械的に拘束する書類として扱われるわけではありません。
厚生労働省は、人生の最終段階における医療やケアについて、本人への情報提供と説明、本人と家族等や医療・ケアチームとの話し合い、本人意思を基本にした合意形成を重視する立場を示しています。
そのため、書面は単独で医師に命令するものではなく、話し合いの中で本人意思を確認するための強い手がかりとして位置づけるのが現実的です。
- 書面だけで完結させない
- 主治医に内容を見せる
- 家族と繰り返し話す
- 入院時に提出する
- 施設の書式も確認する
- 定期的に見直す
「書いたから安心」ではなく、「書いた内容を関係者が知っているから安心」という状態を作ることが、延命治療拒否の書面を実際に役立てるための基本です。
医療者に相談する
延命治療拒否の書面は、自分だけで完成させるより、かかりつけ医や病院の相談窓口、訪問診療医、ケアマネジャーなどに見てもらうと現実に合いやすくなります。
本人が想像している延命治療と、医療者が使う延命措置の範囲がずれていることがあり、そのまま書くと必要な治療まで拒否しているように読まれる可能性があります。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| かかりつけ医 | 病状に合う治療選択肢 |
| 病院の相談員 | 入院時の意思確認や書式 |
| 訪問診療医 | 在宅看取りや急変時対応 |
| ケアマネジャー | 介護サービスとの連携 |
| 公証役場 | 尊厳死宣言公正証書の相談 |
| 法律専門職 | 任意後見や死後事務との整理 |
相談するときは、「延命治療を拒否したい」とだけ伝えるのではなく、「回復が見込めない状態で苦痛の大きい処置を避けたいが、痛みを取る治療は受けたい」のように目的を説明すると話が進みやすくなります。
医療者との対話を通じて書面を整えることは、本人の意思を弱めることではなく、むしろ誤解なく実現しやすくする作業です。
家族の反対を想定する
延命治療拒否の書面を作るときは、家族が反対したり迷ったりする可能性を想定しておく必要があります。
本人は穏やかな最期を望んでいても、家族は「できる治療は全部してほしい」と考えることがあり、急変時には感情が強くなって書面の内容が受け入れられないことがあります。
そのため、元気なうちに書面を見せながら、「なぜそう考えるのか」「どの治療を望まないのか」「苦痛を取る治療は希望しているのか」を繰り返し話すことが大切です。
家族全員の意見が完全に一致しなくても、本人が自分の言葉で説明した記憶が残っていれば、いざという場面で書面が受け入れられやすくなります。
反対が強い場合は、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーなど第三者を交えて話すと、家族が感情だけでなく医療的な見通しを踏まえて考えやすくなります。
延命治療拒否の書面を役立てる準備

延命治療拒否の書面は、作成後の扱い方によって実際の役立ち方が大きく変わります。
自宅の引き出しにしまったままでは急変時に見つからない可能性があり、家族の一人だけが知っている状態では他の家族との間で混乱が起こることもあります。
ここでは、保管場所、共有方法、見直しのタイミングを具体的に整理します。
保管場所を知らせる
延命治療拒否の書面は、必要なときに見つかる場所に保管して初めて意味を持ちます。
大切な書類だからといって金庫や貸金庫に入れると、急な入院や救急搬送の際に家族が取り出せず、医療者に提示できない可能性があります。
自宅で保管する場合は、保険証、診察券、お薬手帳、介護保険証、緊急連絡先などと一緒にまとめ、家族や代理で伝える人に場所を伝えておくと実用的です。
- 保険証と同じ場所
- お薬手帳の近く
- 冷蔵庫の緊急連絡袋
- 家族が分かる書類棚
- 代理人の手元
- かかりつけ医の控え
スマートフォンやクラウドに画像を保存する方法もありますが、原本の所在が分からないと困ることがあるため、紙の原本とコピーの両方を準備すると安心です。
保管場所は書面の末尾にも記載し、更新したときは古いコピーが残らないように入れ替えることが大切です。
共有先を決める
延命治療拒否の書面は、誰に共有するかをあらかじめ決めておくと混乱を防げます。
共有先が多すぎると管理が難しくなりますが、少なすぎると急変時に誰も書面を提示できないため、本人の状況に合わせた範囲で共有する必要があります。
| 共有先 | 共有する理由 |
|---|---|
| 配偶者 | 最も近い家族として説明しやすい |
| 子ども | 兄弟姉妹間の認識差を減らせる |
| 代理で伝える人 | 医療者への説明役になれる |
| かかりつけ医 | 病状に応じた助言を受けられる |
| 施設職員 | 急変時の対応方針に反映しやすい |
| 訪問看護師 | 在宅療養中の変化に対応しやすい |
共有するときは、書面を渡すだけでなく、「これは今の自分の希望であり、必要に応じて見直すものです」と説明すると受け止められやすくなります。
特に子どもが複数いる場合は、一人だけに渡すより全員に同じ説明をしたほうが、後から「聞いていない」という対立を避けやすくなります。
定期的に見直す
延命治療拒否の書面は、定期的に見直して現在の意思と一致しているか確認する必要があります。
健康なときに考えた希望と、実際に病気を経験した後の希望は変わることがあり、家族関係や介護環境の変化によって選びたい医療や過ごしたい場所も変わります。
見直しの目安は一年に一度でもよいですが、病気の診断、入院、手術、施設入所、配偶者や代理人の死亡、引っ越しなどがあったときは必ず確認したいところです。
変更がない場合でも、「令和○年○月○日確認、内容に変更なし」と書き添えるだけで、最新の意思であることが伝わりやすくなります。
変更がある場合は、古い書面と新しい書面が混在しないようにし、共有先へ最新版を渡し直すことが実務上の大きなポイントです。
延命治療拒否の書き方は家族と医療者に伝わる形が大切
延命治療拒否の書き方で最も大切なのは、「延命治療はいりません」という短い宣言で終わらせず、どのような状態で、どの医療行為を望まず、どのケアは希望するのかを具体的に残すことです。
本人情報、作成日、自筆署名、対象となる状態、拒否したい処置、希望する緩和ケア、代理で伝える人、家族へのメッセージ、保管場所を整理すると、書面は単なる意思表示ではなく、実際の話し合いに使える資料になります。
また、書面の効力を過信せず、かかりつけ医や医療相談員に内容を見てもらい、家族と繰り返し話しておくことが欠かせません。
厚生労働省の人生会議に関する情報でも、人生の最終段階における医療やケアは、本人と家族等、医療・ケアチームが十分に話し合い、本人の意思決定を基本に進める考え方が示されています。
延命治療を拒否する書面は、死を急ぐための書類ではなく、自分らしく過ごすための希望を周囲に伝える手段なので、文例を参考にしながらも自分の言葉を加え、見直しと共有を続けることが何より重要です。
参考にする情報としては、厚生労働省の人生会議に関するページや、日本尊厳死協会のリビング・ウイルの説明などを確認し、自分の状況に合わせて主治医や専門家へ相談しながら整えると安心です。



